PROJECT STORYプロジェクトストーリー
EPISODE#01
踏み込んだ先に
現地に到着すると、不安は的中。当時の地主様の祖父にあたる方が周辺一帯を宅地造成した際に残置された山林で、手入れもままならず、台風が直撃した際に起きたと思われる敷地内の樹木が倒木し、土地周辺の電線を分断するなどが起こり、所有者も手に負えない状態であった。「創造を現実に。」そう思い、荒れ果てた山林を住宅地として再整備できないかと思案し、京都市に開発許認可の相談を持ちかけた。
すると、敷地内に存在する崖の一部が崩落しているので京都市としても土砂災害警戒区域に指定しようとしていた矢先だったという。京都市の立場としても今回の造成工事の際に安全対策を講じてもらえると、とても助かるとの打診をされたので私は本格的に計画を着手をする決断をした。

EPISODE#02
消えた名義人と開発の行方
まず、隣地境界と敷地内高低差を把握する為に測量を実施したところいくつかの問題が判明した。
土砂災害警戒区域に認定される原因となった本物件内に存在する崩落寸前の崖地が現地測量の結果、実は対象地でなく、隣地所有者様の敷地内であった事が判明する。
今後開発工事を進めていくに際して、この崖を除外しての計画は将来に禍根を残す事になると判断したので隣地所有者様と幾度かの面談を重ね、問題となっている崖を全て除却する事に同意を得ることができた。
次に、京都市で開発申請を行うためには隣地所有者全員の同意が必要となるが、調査を進めていくと隣地所有者の1件が現在は存在しない事が分かった。
なぜその様な状況になっているのか関係者に詳しく聞きに行くと、もともとは曽祖父にあたる方が江戸時代末期か明治初期頃にお寺が所有していた土地を購入し、自宅を建築したが、土地の名義変更登記を一切行わず、そのままの状態で放置されていたとのこと。
時が経つにつれ、当時の登記名義人であるお寺が消滅し、登記をやり直すには通常の手続きでは不可能となっていた。さらに、裁判所を通じて時効取得を行うには多大な費用と時間がかかるため、そのまま放置されていたのだ。


EPISODE#03
複雑な道のりを1歩ずつ
なにか方法はないかと、居住者との詳細ヒアリングを実施。そこで、先代であるお父様の時代から約50年以上も土地の固定資産税を納税しているという事実を基に京都市と幾度と協議を重ねた。
過去の履歴照合から、苦労の末に、現居住者を登記名義人と同等として認める特例での結論を得ることができた。
これで一段落かと思いきや、次の問題が浮上した。
京都市との開発協議を進めていく中で京都市景観条例により敷地全体を2m以上下げなければ、2階建ての建物を建築する許可が下りないことが判明。
さらに、擁壁の表面に特殊加工を施すようにとの指導を受ける。
諸々の変更を経て、開発許認可の取得には当初計画よりも1年以上遅れる事となった。
そんな踏んだり蹴ったりのところに、さらに別の問題も発生。
本件敷地内に設置された電柱を撤去しようと関西電力に申し出たところ、その電柱にある超高圧電線は、とある工場への電力供給専用であることが判明。通常の電柱撤去作業では電力供給を止めずに施工することができず、一旦電力供給を停止しなければならなかった。
しかし、この工場は365日24時間稼働しており、電力供給を止めることは契約上不可能だった。
そのため、関西電力と工場を含めて数回の協議を重ね、本来は不可能なところ、たまたま工場サイドの個別の事情がうまく本件の計画に合致し、計画停電の日時を決めることに奇跡的に成功。
何とか無事電柱の撤去が完了した。

